
こんにちは、CalivinoのManamiです。
皆さんは、「イタリアワイン」と聞くと、どんなイメージをお持ちですか?
「キャンティのボトルがお洒落」「ピザやパスタに合いそう!」という親しみやすいイメージの一方で、「種類が多すぎて、何が何だか分からない…」「ブドウ品種の名前が呪文みたいで覚えられない!」なんて、少しとっつきにくい印象を持っている方も多いかもしれません。
実は私も、ワインの勉強を始めた頃はそうでした。フランスワインの有名シャトーや産地は少しずつ覚えてきたものの、イタリアワインの地図を広げた瞬間、そのあまりの多様性にめまいがしたほどです(笑)。
そんな私の考えをガラリと変えてくれたのが、数年前に旅した南イタリアの小さな港町での出来事でした。観光客向けのリストランテではなく、地元の人で賑わう「トラットリア」と呼ばれる大衆食堂。メニューは壁に手書きされているだけで、ワインリストなんてありません。あるのは「Vino Rosso(赤ワイン)」と「Vino Bianco(白ワイン)」の文字だけ。
おそるおそる赤ワインをデキャンタで頼むと、店主のおじさんが「うちの畑のブドウだよ!」とウインクしながら、なみなみと注いでくれました。ラベルもなければ、高価なグラスでもない。でも、そのワインを一口飲んだ瞬間、私はハッとしました。トマトとニンニクの香りが食欲をそそる大皿の魚介パスタと、その素朴で太陽の味がするワインが、口の中で完璧に調和したのです。まるで、昔から知っていたかのように、ごく自然に。
その時、私は気づきました。イタリアワインは、小難しく頭で飲むものじゃない。その土地の空気や料理と一緒に、心と体で楽しむものなんだ、と。あの陽気な食卓の風景こそが、イタリアワインの原点なのだと感じました。
この記事では、かつての私のように「イタリアワインって難しそう」と感じているあなたへ、その無限の魅力と楽しみ方を、イタリアを旅するような気分で、分かりやすく、そして情熱的にお伝えしていきます。
この記事を読み終える頃には、あなたの目の前にイタリアワインの広大な地図が広がり、まるで現地の人のように、自分の好みやその日の気分で、自由にワインを選べるようになっているはず。さあ、太陽と情熱が詰まった美味しい旅へ、一緒に出かけましょう!
ステップ1:なぜ私たちはイタリアワインに惹かれるのか?~太陽と情熱の恵み~
世界最大のワイン生産国の一つであるイタリア。そのワインが、なぜこれほどまでに世界中の人々を魅了し続けるのでしょうか。まずは、イタリアワインが持つ、フランスワインなどとは一味違う、ユニークな魅力の秘密に迫ります。
フランスワインとの違いは?イタリアワインならではの3つの魅力
ワイン大国として常に比較されるフランスとイタリア。どちらも素晴らしいワインを生み出しますが、その個性は大きく異なります。例えるなら、緻密に計算された芸術品のようなフランスワインに対し、イタリアワインは情熱的で人間味あふれるオペラのよう。その魅力は、大きく3つに集約されます。
魅力1:圧倒的なブドウ品種の多様性(土着品種の宝庫)
イタリアワインの最大の特徴は、なんといってもそのブドウ品種の多さです。フランスではカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなど、世界中で栽培される国際品種が有名ですが、イタリアは**「土着品種」の宝庫**。その土地でしか栽培されていないような、個性的なブドウがなんと500種類以上(一説には1000種類以上とも!)あると言われています。
サンジョヴェーゼ、ネッビオーロ、ネロ・ダーヴォラ…。まるで人の名前のようなユニークな品種たちが、それぞれの土地の気候や土壌と結びつき、他のどこにもない唯一無二の味わいを生み出しているのです。この多様性こそが、私たちを飽きさせない、イタリアワインの無限の魅力の源泉です。
魅力2:北から南まで、全く異なる気候風土が生むスタイルの幅広さ
長靴の形をしたイタリア半島は、北はアルプス山脈の麓から、南は地中海に浮かぶシチリア島まで、非常に南北に長い国土を持っています。そのため、地域によって気候が全く異なります。
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北イタリア: アルプスの影響を受けた冷涼な気候。酸がキリッとした、エレガントで繊細なスタイルのワインが多く造られます。
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南イタリア: 地中海の太陽を燦々と浴びる温暖な気候。果実味が豊かで、アルコール度数が高めの、パワフルで飲みごたえのあるワインが特徴です。
この気候のグラデーションにより、爽やかなスパークリングワインから、長期熟成に耐える重厚な赤ワイン、甘美なデザートワインまで、ありとあらゆるスタイルのワインが生まれます。一つの国でこれほど多彩なワインが楽しめるのは、イタリアならではと言えるでしょう。
魅力3:『食との融合』を前提に造られる、陽気なフードフレンドリーさ
冒頭の私の体験談にも通じますが、イタリアワインは**「食事と共に楽しむこと」を大前提に造られています。イタリア人にとって、ワインは飲み物であると同時に「食べ物」の一部。そのため、多くのイタリアワインは、単体で飲むと少し酸っぱく感じられたり、渋みが強く感じられたりすることがあります。しかし、これが料理と合わさった瞬間に魔法が起こります。ワインの酸味がトマトソースの酸味と手を取り合い、タンニン(渋み)が肉料理の脂をさっぱりと洗い流してくれるのです。料理の美味しさを引き立て、自らもさらに美味しくなる。この「食中酒」としての懐の深さ**こそ、イタリアワインが世界中の食卓で愛される最大の理由なのです。
これだけは押さえたい!イタリアワインの格付け(DOCG, DOCなど)を分かりやすく解説
さて、そんな多様なイタリアワインを選ぶ上で、一つの目安となるのが**「格付け」**です。ラベルに書かれたアルファベットが、そのワインの品質を保証するヒントになります。イタリアのワイン法では、主に以下の4つのカテゴリーに分類されています。
イタリアワインの格付け(ピラミッド)
D.O.C.G. (Denominazione di Origine Controllata e Garantita)
統制保証付原産地呼称。ピラミッドの頂点に立つ最高格付け。
ブドウの品種、栽培地域、醸造方法など、DOCよりもさらに厳しい規定をクリアし、瓶詰めの前に政府機関による試飲検査にも合格したワインだけが名乗れます。
D.O.C. (Denominazione di Origine Controllata)
統制原産地呼称。DOCGに次ぐ格付け。
特定の地域で、定められたブドウ品種や製法で造られたワインであることを示します。イタリアワインの品質を支える中核的な存在です。
I.G.T. (Indicazione Geografica Tipica)
地理的表示。DOCやDOCGの規定よりは緩やか。
「トスカーナ産」のように、より広い地域の名前が認められています。自由な発想で造られた、高品質で個性的なワインも多く含まれています。後述する「スーパータスカン」も、多くはこのIGTに分類されます。
Vino(ヴィーノ)
いわゆるテーブルワイン。産地やブドウ品種、ヴィンテージの表示義務がなく、最も自由なカテゴリーです。日常的に楽しまれるワインが多く、中には掘り出し物も。
ポイント:
初心者のうちは、まず**「DOC」や「DOCG」と書かれたワインを選ぶ**と、大きく外すことはないでしょう。ただし、格付けが全てではないのがイタリアワインの面白いところ。格付けに縛られず、自分の信念を貫いて造られた結果、IGTに甘んじている偉大なワイン「スーパータスカン」のような存在もあります。格付けはあくまで「品質の目安」として、ワイン選びの参考にしてみてください。
### ラベルの読み方がわかれば怖くない!ワイン選びが楽しくなる基本知識
イタリアワインのラベルは、一見すると情報量が多くて難解に感じるかもしれません。しかし、いくつかのポイントを押さえれば、誰でも簡単に読み解くことができます。
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ワイン名:
CHIANTI CLASSICO(キャンティ・クラシコ)など。これがワインの名前であり、産地名であることが多いです。 -
格付け:
Denominazione di Origine Controllata e Garantita (D.O.C.G.)のように書かれています。 -
生産者名:
CASTELLO DI BROLIO(カステッロ・ディ・ブローリオ)など、誰がこのワインを造ったかを示します。 -
ヴィンテージ:
2020など、ブドウの収穫年。 -
ブドウ品種名:
Sangiovese(サンジョヴェーゼ)のように品種名が書かれている場合もあります。 -
アルコール度数:
13.5% volのように記載されています。
最初は「ワイン名(産地名)」と「格付け」に注目するだけで十分です。例えば、「トスカーナ州のDOCGワインである、キャンティ・クラシコ」という情報が読み取れるだけで、ワイン選びは格段に楽になります。慣れてきたら、生産者で選んでみるのも楽しいですよ。
ステップ2:北から南へイタリア縦断!主要産地の特徴と代表ワイン【北部編】
ここからは、実際にイタリアの地図を広げ、北から南へとワイン産地を巡る旅に出かけましょう。まずは、アルプスの影響を受けた、エレガントで高貴なワインが多く生まれる北部イタリアからです。
「ワインの王様」が生まれる地【ピエモンテ州】
イタリア北西部に位置し、フランスと国境を接するピエモンテ州。「山の麓」という名の通り、アルプス山脈の麓に広がるこの地は、イタリアワインの最高峰**「バローロ」と「バルバレスコ」**を生み出す、まさに王様の産地です。
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気候と特徴:
アルプスとアペニン山脈に囲まれた丘陵地帯。昼夜の寒暖差が大きく、秋には深い霧が発生します。この霧(ネッビア)が、この地を代表するブドウ品種「ネッビオーロ」の名前の由来になったと言われています。
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代表的なブドウ品種:
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ネッビオーロ(赤): 非常に力強いタンニンと豊かな酸を持ち、長期熟成によってバラやなめし革のような複雑で官能的なアロマを生み出す、高貴な品種。
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バルベーラ(赤): ピエモンテで最も広く栽培されている品種。豊かな果実味と生き生きとした酸が特徴で、日常的に楽しめるワインが多く造られます。
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モスカート(白): マスカットのこと。華やかで甘いアロマが特徴で、アルコール度数の低い甘口スパークリングワインになります。
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覚えておきたい有名ワイン:
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バローロ (Barolo) [DOCG]: 「ワインの王様にして、王様のワイン」と讃えられる、イタリアを代表する偉大な赤ワイン。ネッビオーロ100%で造られ、法律で定められた長い熟成期間を経てリリースされます。非常にパワフルで、飲み頃を迎えるまでには10年以上の歳月を要します。
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バルバレスコ (Barbaresco) [DOCG]: バローロと同じくネッビオーロ100%で造られますが、バローロより少しだけ土壌が豊かで気候も温暖なため、より早くから楽しめる、エレガントで女性的なスタイルと評されます。「ワインの女王」とも呼ばれ、バローロと飲み比べてみるのも一興です。
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アスティ・スプマンテ (Asti Spumante) [DOCG]: モスカート種から造られる、甘口のスパークリングワイン。マスカットや桃の華やかな香りと優しい甘さで、ワイン初心者や女性に大人気。クリスマスなどのパーティーシーンにもぴったりです。
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オシャレな泡から偉大な赤まで【ヴェネト州】
水の都ヴェネツィアを州都に持つヴェネト州は、ピエモンテ州と並ぶイタリア屈指のワイン産地。その魅力はなんといってもスタイルの多様性。世界中で愛されるスパークリングのプロセッコから、ユニークな製法で造られる濃厚な赤ワインアマローネまで、多彩な顔ぶれが揃います。
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気候と特徴:
北はドロミテ山地、南はアドリア海に面し、変化に富んだ地形を持っています。ガルダ湖周辺の穏やかな気候から、平野部の温暖な気候まで、様々な環境が多様なワインを生み出しています。
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代表的なブドウ品種:
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コルヴィーナ(赤): この地を代表する土着品種。豊かな果実味とスパイシーな風味が特徴で、ヴァルポリチェッラやアマローネの主要品種となります。
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ガルガーネガ(白): 白ワイン「ソアーヴェ」の主要品種。アーモンドやカモミールのような繊細な香りと、フレッシュな酸が魅力です。
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グレーラ(白): スパークリングワイン「プロセッコ」の原料となる品種。リンゴや洋梨のような爽やかな香りが特徴です。
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覚えておきたい有名ワイン:
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アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ (Amarone della Valpolicella) [DOCG]: 収穫したブドウを数ヶ月間「陰干し」して糖度と風味を凝縮させてから造る、非常に贅沢で濃厚な赤ワイン。干しブドウやビターチョコレートのような複雑な風味を持ち、アルコール度数も15%以上と非常にパワフル。瞑想のワインとも呼ばれます。
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ソアーヴェ (Soave) [DOC]: 日本でも人気の高い、イタリアを代表する辛口白ワイン。すっきりとクリーンな味わいで、どんな料理にも合わせやすい万能選手です。特に「ソアーヴェ・クラシコ」と名の付くものは、古くからの優良な畑で造られた、ワンランク上の味わいです。
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プロセッコ (Prosecco) [DOC]: 今や世界で最も売れているスパークリングワイン。シャンパンと同じ瓶内二次発酵ではなく、大きなタンクで発酵させるため、リーズナブルでフレッシュ&フルーティーな味わいが楽しめます。食前酒(アペリティーヴォ)にぴったりです。
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白ワインの聖地【フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州】
イタリアの北東端、スロベニアと国境を接するこの州は、**「イタリア最高の白ワイン産地」**として世界中のワイン愛好家から尊敬を集めています。そのクリーンでアロマティック、ミネラル感に溢れた白ワインは、一度飲んだら忘れられない感動を与えてくれます。
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気候と特徴:
北はアルプス、南はアドリア海。この両方からの影響を受けることで、昼夜の寒暖差が生まれ、ブドウに美しい酸と豊かな香りをもたらします。
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代表的なブドウ品種:
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フリウラーノ(白): この地を代表する土着品種。アーモンドのような香ばしいニュアンスと、豊かな果実味が特徴。
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ソーヴィニヨン・ブラン(白)、ピノ・グリージョ(白): 国際品種ですが、フリウリの地で育つと、フランス産や他の地域のイタリア産とは一線を画す、驚くほど香り高く、ミネラルに富んだワインになります。
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ワイン選びのポイント:
フリウリのワインは、特定のDOCGを目指すよりも、信頼できる生産者を見つけるのがおすすめです。「イエルマン」や「リヴィオ・フェッルーガ」といったトップ生産者のワインは高価ですが、その品質は折り紙付き。魚介のカルパッチョやフリット(揚げ物)と合わせれば、最高の食体験が待っています。
ステップ3:北から南へイタリア縦断!主要産地の特徴と代表ワイン【中部・南部・島嶼部編】
旅はイタリアの中心部、そして太陽が降り注ぐ南へと続きます。陽気で情熱的、そしてどこか懐かしい味わいのワインたちが、私たちを待っています。
キャンティだけじゃない!美食の都【トスカーナ州】
フィレンツェやシエナといった古都を抱えるトスカーナ州は、イタリアで最も有名で、多くのワイン愛好家にとっての「心の故郷」とも言える場所。この地を代表するブドウ品種**「サンジョヴェーゼ」**から造られるワインは、イタリアワインの象徴的存在です。
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気候と特徴:
なだらかな丘陵地帯がどこまでも続き、イトスギの木が点在する、絵画のような風景が広がります。内陸部の温暖な気候が、サンジョヴェーゼの栽培に最適な環境をもたらしています。
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代表的なブドウ品種:
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サンジョヴェーゼ(赤): イタリアで最も重要な土着品種の一つ。高い酸味としっかりとしたタンニンが特徴で、スミレやチェリーのような香りを持ちます。熟成すると、紅茶やなめし革のような複雑な風味を帯びます。
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覚えておきたい有名ワイン:
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キャンティ・クラシコ (Chianti Classico) [DOCG]: あの麦わらで編んだボトル(フィアスコ)で有名なキャンティの中でも、古くから中心的な優良産地で造られるのが「クラシコ」。黒い雄鶏(ガッロ・ネーロ)のシンボルマークが目印です。トマトソースを使ったパスタやピッツァとの相性は、もはや説明不要の鉄板コンビ。
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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ (Brunello di Montalcino) [DOCG]: サンジョヴェーゼの特定クローン(ブルネッロ)を100%使用し、長期熟成を経てリリースされる、トスカーナの最高峰赤ワイン。バローロと並び称される偉大なワインで、非常にパワフルかつエレガント。特別な日のディナーにふさわしい一本です。
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スーパータスカン (Supertuscan): 1970年代、当時のDOC法に縛られず、自由な発想で「最高のワイン」を造ろうとした情熱的な生産者たちが生み出した伝説のワイン。サンジョヴェーゼにカベルネ・ソーヴィニヨンなどの国際品種をブレンドしたり、サンジョヴェーゼ100%にこだわったりとスタイルは様々。格付けはIGTながら、価格も品質もDOCGを凌駕するものが多く存在します。「サッシカイア」や「ティニャネロ」が有名です。
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太陽の恵みを満喫!コスパの宝庫【シチリア州】
地中海最大の島、シチリア。かつては安価なバルクワインの産地というイメージでしたが、近年、品質が劇的に向上し、世界中から熱い視線が注がれている注目の産地です。太陽の恵みをいっぱいに受けた、コストパフォーマンス抜群のワインが見つかります。
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気候と特徴:
一年を通して温暖で乾燥した地中海性気候。ブドウが病気になりにくく、有機栽培(オーガニック)にも適した土地です。また、活火山であるエトナ山の周辺では、火山性土壌が生み出すミネラル豊かでエレガントなワインが造られています。
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代表的なブドウ品種:
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ネロ・ダーヴォラ(赤): 「シチリアの黒いブドウ」という意味。プラムや黒コショウのようなスパイシーな香りを持ち、力強くも滑らかな味わいが特徴です。
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グリッロ(白): 柑橘類やハーブのような爽やかな香りが魅力の土着品種。生き生きとした酸があり、シーフードとの相性は抜群です。
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覚えておきたい有名ワイン:
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エトナ・ロッソ (Etna Rosso) [DOC]: エトナ山の麓で造られる赤ワイン。冷涼な気候と火山性土壌の影響で、シチリアの他のワインとは全く違う、ブルゴーニュのピノ・ノワールを思わせるような、繊細でミネラリーな味わいを持ちます。今、最もトレンディなイタリアワインの一つです。
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まだまだある!その他の注目産地
イタリアワインの旅はまだまだ終わりません。他にも個性豊かな産地がたくさんあります。
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ロンバルディア州: シャンパンと同じ製法で造られる、イタリア最高峰のスパークリングワイン**「フランチャコルタ (Franciacorta) [DOCG]」**は必飲です。
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プーリア州: 長靴のかかとにあたる、イタリア南部の州。太陽をたっぷり浴びた**「プリミティーヴォ」**種から造られる、濃厚でジャミーな赤ワインが人気です。
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カンパーニャ州: ナポリを擁する州。「アリアニコ」種から造られる赤ワイン**「タウラージ (Taurasi) [DOCG]」**は、「南のバローロ」と呼ばれるほどの力強さと長期熟成能力を秘めています。
ステップ4:シーン別・初心者におすすめ!間違いのないイタリアワインの選び方
さて、イタリアの主要産地を巡ってきましたが、「やっぱりまだ、どれを選べばいいか迷う…」という方も多いはず。ここでは、もっと具体的に、シチュエーションや料理に合わせたワイン選びのヒントをご紹介します。
まずはこれを飲んでみて!1,000円台で買える高コスパ赤・白・泡
イタリアワインの素晴らしいところは、手頃な価格でも本当に美味しいワインがたくさんあること。まずはデイリーに楽しめる、1,000円台で見つかる鉄板の高コスパワインから試してみませんか?
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【赤ワイン】モンテプルチアーノ・ダブルッツォ (Montepulciano d'Abruzzo)
中部イタリア、アブルッツォ州で造られる赤ワイン。豊かな果実味と穏やかなタンニンが特徴で、非常に飲みやすいのが魅力。ミートソースのパスタやハンバーグなど、家庭料理にぴったり寄り添ってくれます。スーパーでもよく見かける、親しみやすい一本です。
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【白ワイン】ソアーヴェ・クラシコ (Soave Classico)
北部ヴェネト州の定番白ワイン。リンゴや白い花のような爽やかな香りと、すっきりとした飲み口で、和食を含めどんな料理にも合わせやすい万能選手。特に「クラシコ」が付くものを選ぶと、よりミネラル感や味わいの深みが感じられます。
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【スパークリング】プロセッコ (Prosecco)
同じくヴェネト州のプロセッコは、乾杯のシーンに欠かせない存在。フレッシュでフルーティーな味わいは、誰からも愛されます。辛口(Brut)を選べば、食前酒としてだけでなく、前菜や軽いパスタなどとも楽しめます。
今夜はイタリアン!定番料理に合わせる鉄板ペアリング
「イタリアワインは食中酒」。その真価は、やはり料理と合わせてこそ発揮されます。定番のイタリア料理に、どんなワインを合わせれば良いか、簡単な法則をご紹介します。
ペアリングの基本法則:『産地を合わせる』
最も簡単で、最も成功しやすいのが、**「その料理が生まれた土地のワインを合わせる」**という方法です。郷土料理とその土地のワインは、長い歴史の中で育まれてきた、最高のパートナーなのです。
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トマトソースのパスタ(ボロネーゼなど)には?
→ **トスカーナ州のサンジョヴェーゼ(キャンティなど)**を!
トマトの酸味と、サンジョヴェーゼが持つ生き生きとした酸味が綺麗に同調し、お互いの旨味を引き立て合います。
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魚介のカルパッチョやアクアパッツァには?
→ シチリア州のグリッロやフリウリ州のソーヴィニヨン・ブランを!
ワインの持つ柑橘系の爽やかな香りとミネラル感が、魚介の繊細な風味や磯の香りと完璧にマッチします。レモンをキュッと搾るような感覚で楽しめます。
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ピッツァ・マルゲリータには?
→ カンパーニャ州のワイン、特にアリアニコ種のロゼワインなんていかがでしょう?
ナポリピッツァ発祥の地、カンパーニャ州のワインを合わせるのが粋。ロゼワインの持つ軽やかな果実味と爽やかな酸が、トマト、モッツァレラ、バジルのシンプルな美味しさを引き立てます。
ちょっと特別な日に。プレゼントにも最適なワンランク上のイタリアワイン
記念日や大切な人への贈り物には、少し奮発して、記憶に残る一本を選びたいもの。そんな時に自信を持っておすすめできる、ハレの日のイタリアワインをご紹介します。
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力強いワインが好きな方へ:『バローロ』または『アマローネ』
「ワインの王様」バローロの荘厳な味わいや、陰干しブドウから生まれるアマローネの濃厚で複雑な風味は、ワイン好きな男性や上司への贈り物に最適。じっくりと時間をかけて向き合いたい、特別なワインです。
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エレガントなワインが好きな方へ:『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』
力強さの中に、驚くほどのエレガンスと気品を秘めたブルネッロ。洗練された味わいを好む方や、フレンチ好きの方にもきっと喜ばれる、トスカーナの至宝です。
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ワイン通の方を唸らせたいなら:『スーパータスカン』または『エトナ・ロッソ』
伝統と革新の物語が詰まったスーパータスカンや、今まさにトレンドの最前線にいるエトナ・ロッソは、ワインに詳しい方へのギフトにぴったり。「おっ、これを分かっているね!」と、一目置かれること間違いなしの、通なセレクトです。
ステップ5:もっと深く知りたいあなたへ~イタリアワインの面白トリビア~
最後に、知っているとイタリアワインがもっと面白くなる、少しマニアックな豆知識や物語をご紹介します。ワイン会などで披露すれば、あなたも立派なイタリアワイン通です。
偉大な異端児「スーパータスカン」誕生物語
今でこそ世界中で称賛されるスーパータスカンですが、その誕生は、まさに「事件」でした。1960年代、トスカーナのワイン法(DOC法)では、「キャンティ」を名乗るためには白ブドウをブレンドすることが義務付けられていました。しかし、一部の意欲的な生産者たちは、「最高の赤ワインを造るためには、白ブドウは不要だ。むしろ、フランス品種のカベルネ・ソーヴィニヨンなどをブレンドした方が、もっと偉大なワインができるはずだ」と考えました。
彼らは法律を無視し、自らの信じる最高のブレンドでワインを造り始めます。その結果、法律上は最高格付けのDOCGを名乗れず、最も下のカテゴリーである「Vino da Tavola(テーブルワイン)」としてしか販売できませんでした。しかし、その圧倒的な品質は、やがてブラインドテイスティングでボルドーのトップシャトーを打ち負かすなど、世界中を驚かせます。格付けは最低でも、価格は最高級。この「型破りな偉大なワイン」を、人々は敬意を込めて「スーパータスカン」と呼ぶようになったのです。彼らの情熱が、やがて法律さえも変えていったという、イタリアらしいドラマチックな物語です。
甘口から辛口まで!知れば楽しい「パッシート」の世界
ヴェネト州の「アマローネ」でご紹介した**「陰干し」の技術。イタリア語で「アパッシメント」と言い、この製法で造られたワインを総称して「パッシート」**と呼びます。収穫したブドウを風通しの良い部屋の棚や藁の上で数週間から数ヶ月間乾燥させることで、ブドウの水分が蒸発し、糖分、酸、その他の風味成分がギュッと凝縮されます。
この凝縮したブドウから造られるワインは、非常に濃厚で複雑な風味を持ちます。アマローネのように最後まで発酵させて辛口に仕上げるものもあれば、発酵を途中で止めて、濃厚な甘口のデザートワインにすることもあります。トスカーナの「ヴィン・サント」などが有名ですね。この手間暇かかる伝統製法は、イタリアワインの奥深さを象徴する技術の一つです。
イタリアの食前酒「アペリティーヴォ」文化とワイン
イタリアの夕食の時間が日本より遅いのをご存知ですか?その前の、夕方18時~20時頃になると、街中のバール(カフェ兼バー)が賑わい始めます。これが**「アペリティーヴォ」**と呼ばれる、食前酒を楽しむ素敵な習慣です。
ワインやカクテルを一杯頼むと、オリーブや生ハム、ブルスケッタといった簡単なおつまみが無料で(あるいはビュッフェ形式で)楽しめるという、素晴らしい文化。ここで最もよく飲まれているのが、プロセッコなどのスパークリングワインです。また、プロセッコをベースにした「スプリッツ」というオレンジ色のカクテルも大人気。アペリティーヴォは、胃を目覚めさせ、ディナーをより美味しくするための準備運動であり、友人たちとのおしゃべりを楽しむ大切な社交の時間なのです。この文化を知ると、プロセッコを飲む時間がもっと楽しくなりますよ。
まとめ:さあ、あなたの食卓にイタリアの太陽を
イタリアワインを巡る長い旅に、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この記事を通して、イタリアワインは「難しい」のではなく、どこまでも**「自由で、多様で、人間味にあふれている」**ということを感じていただけたなら、とても嬉しいです。
最後に、今日の旅のポイントを振り返ってみましょう。
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イタリアワインの魅力は「多様な土着品種」「南北の気候差」「食との融合」。
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まずはDOC、DOCGの格付けを目安に選んでみよう。
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北はエレガント、南はパワフル。産地を知れば、好みのスタイルが見つかる。
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迷ったら料理と産地を合わせるのが鉄則。トマトソースにはサンジョヴェーゼを!
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スーパータスカンのような、情熱的な物語もイタリアワインの醍醐味。
もう、ワインショップのイタリアコーナーの前で立ち尽くす必要はありません。難しく考えずに、まずは一本、今日のあなたの夕食に合わせて、ワインを選んでみませんか?ラベルの地名から、その土地の料理や風景を想像するのも、とても楽しい時間です。
あなたのいつもの食卓に、イタリアワインが一本加わるだけで、そこにはパッと太陽の光が差し込み、陽気な会話が生まれるはず。
次にイタリアンレストランに行ったら、ぜひ知っている産地やブドウ品種のワインをオーダーしてみてくださいね。きっと、料理とワインが織りなす最高のシンフォニーを体験できるでしょう。
Buon appetito!(ボナペティート! / たくさん召し上がれ!)