チーズは世界中で愛される発酵食品ですが、特にヨーロッパでは長い歴史を持ち、地域ごとに独自の製法や風味が受け継がれています。こうした伝統的なチーズを守るために、EUでは地理的表示制度(GI:Geographical Indications)が設けられています。今回は、EUの地理的表示制度がどのようにチーズの品質と伝統を保護しているのか、詳しく解説します。
1. 地理的表示制度(GI)とは?
EUの地理的表示制度(GI)は、特定の地域で伝統的な製法によって作られた農産物や食品の名称を保護する制度です。この制度の目的は、
✅ 地域の特産品のブランド価値を高める
✅ 消費者に正確な情報を提供し、品質を保証する
✅ 偽物や類似品から本物の伝統食品を守る
ことにあります。
GIには、主に3つのカテゴリーがあります。
① PDO(原産地名称保護 - Protected Designation of Origin)
その食品が原料の調達から加工・生産まで全て特定地域で行われていることを保証するもの。最も厳格な基準です。
例:パルミジャーノ・レッジャーノ(Parmigiano Reggiano)、ロックフォール(Roquefort)
② PGI(地理的表示保護 - Protected Geographical Indication)
製造工程の一部が指定地域で行われていれば認められるもの。PDOよりも柔軟な基準。
例:エダム(Edam)、ティルジット(Tilsit)
③ TSG(伝統的特産品保証 - Traditional Speciality Guaranteed)
地域の特定性ではなく、伝統的な製法が守られていることを保証する制度。
例:モッツァレラ(Mozzarella)(※産地ではなく製法の伝統を保護)
2. GI登録されている有名なチーズ
EUには200種類以上のチーズがPDOまたはPGIとして登録されています。その中でも特に有名なものをいくつか紹介します。
🇫🇷 フランス
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ロックフォール(Roquefort)[PDO]
羊のミルクを使用し、特定の洞窟で熟成される青カビチーズ。 -
カマンベール・ド・ノルマンディー(Camembert de Normandie)[PDO]
ノルマンディー地方産の牛乳を使用し、伝統的な方法で作られる白カビチーズ。
🇮🇹 イタリア
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パルミジャーノ・レッジャーノ(Parmigiano Reggiano)[PDO]
「チーズの王様」とも呼ばれ、最低12ヶ月以上熟成されるハードチーズ。 -
ゴルゴンゾーラ(Gorgonzola)[PDO]
北イタリア発祥の青カビチーズで、マイルドからピリッとした辛味の強いものまで種類がある。
🇪🇸 スペイン
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マンチェゴ(Manchego)[PDO]
スペイン・ラ・マンチャ地方の羊の乳から作られるナッツのような風味のチーズ。
🇳🇱 オランダ
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ゴーダ(Gouda)[PGI]
世界的に有名なオランダのチーズで、熟成期間によって味わいが異なる。
3. 地理的表示制度のメリットと課題
✅ メリット
✔ 伝統的な製法の保護:工業的な大量生産ではなく、地域特有の製法を守ることができる。
✔ 地域経済の発展:チーズのブランド価値が向上し、観光業や輸出にも貢献。
✔ 品質保証と消費者保護:本物のチーズと偽物を区別しやすくなり、安心して購入できる。
⚠ 課題
🔸 小規模生産者の負担:認証を取得するための手続きやコストが高く、ハードルが高い。
🔸 市場競争:GI認証を受けていないチーズが価格競争に勝ちやすく、認証チーズの販売が難しくなることも。
🔸 模倣品対策:GI認証がない地域で類似品が出回るケースもあり、法的な取り締まりが必要。
4. まとめ:GI制度はチーズの未来を守る鍵
EUの地理的表示制度(GI)は、伝統的なチーズの品質を守り、消費者に本物の味を提供する重要な仕組みです。PDOやPGIといった制度があることで、私たちは世界各国で本場の味を楽しむことができます。
次回、スーパーやチーズ専門店でチーズを選ぶときは、PDOやPGIのマークをチェックしてみてはいかがでしょうか?本場の伝統の味を知る良いきっかけになるかもしれません!